ある文族の一日 その2



文族執務室いつものように幽が、
「ちゃきさん、またいねーっ!!」

と叫んでいるそんな日常の一日であった。
当然のように、ちゃきはあくびをしながら糸を垂らしていた。
他の釣りの人たちと違うのは、糸の先に針と餌がついてないだけであった。
いつものように、知り合いの釣り仲間のコテツに「今日も釣れてないにゃー。」と笑われていた。

良くも悪くもこの間パレードに出た事が、まったく素行に影響していなかった。
懐には、星見司追試験合格の通知が入っていた。
まったく、摂政には頭があがらんにゃーなど考えていると
釣り糸の先に、忍装束に身を包んだ人の顔が映ってくるのを見つけた。

ちゃきは、表情を変えずに口を動かした。
(何かあったか?)
水に映ったものも同じように口元だけを動かし互いに読唇術で会話を始めた。
(犬からの侵入者のようです。いつものように消しましょうか?)
(まて、いまイグドラシルにリンクして照合する。侵入者のデータを上げるんだ。)
水中にいる忍者は、近頃の戦乱によって流れてくる難民や犬の密偵の排除を主な任務としていた。
今回も、近頃増えている難民の一人で排除の命令が下され、そして、任務を全うするものだと考えていた。
(待て、どうやらお客さんのようだ丁重に出迎えろ。)
(はっ。どういった方でしょうか?はやて様のようなお方でしょうか?)
(貴様が知る必要はない、正式な入国が出来るように摂政と幽に事前連絡しておけ。)
(はっ。)
そういうと、水面は再び元に戻りそこには何も無かった。
ちゃきも何事も無かったかのようにあくびをして、ふたたびまどろんでいった。

数時間後
空の、魚用の篭をいつものように引っさげて執務室に入ってちゃきは、
「いやあ、かすにゃん全然つれなかったよ。」
「何やってんですか!この忙しいときに。」
「へっ、何かあったの?」
「入国者ですよ。はい、この資料がちゃきさんの分。」
「うはっ、やべ逃げ…」
キラーン!
「どこに行く気だ?」
るしふぁ専用と書かれた日本刀をちゃきの首筋に当てて、ゆうみがすごむ。
「い、いやあ、喉が渇いたなぁって。」
「お茶くらい出してやるから、素直に仕事しろ。」
「は、はい。」

こうして、いつも通りの日常が流れていくのであった。