S43脱藩



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賢女によってラテン語の手紙を遣わされ、正義のもとへ走りだした01ネコリスがいた。
01ネコリスは、走った。
目的地は、分からないだが正義のある方向だけは分かっていた。
だから、01ネコリスは迷わなかった。
ひたすら、正義を目指した。

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るしにゃん王国は、いつものような日が流れていた。
最高議会である国会は、通常通り運営されていた。
摂政は、可決された案の施行のため書類を仕上げつつ会議に参加していた。
S43は決して、悪ではないが緩慢な時を長く過ごしていた。
その緩慢な時は、目を曇らせていたのかもしれなかった。
目の曇りは、星見司の試験の3級ですら困難なものとしてしまっていた。


だが、心の奥の正義は消えてはいなかった。

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01ネコリスは、走った。
くすぶりながらも確実に存在する正義に向かった。
それは、01ネコリスには青い炎に映った。

そして、ついに見つけた!

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青い光が議会場に現れる。
S43は、息を呑むと
「ワ、ワールドタイムゲート?」
その青い光から青い小さな燐光が現れ、S43の前に降り立った。
いまや、曇ったS43の瞳には、それが01ネコリスかどうかすらも分からなかった。
それでも、01ネコリスはS43を見ると賢女より遣わされた手紙を渡した。
S43は、謎の青い燐光から手紙を貰い受けるとそれを読んだ。
賢女の手紙を読んだS43は、その場で号泣した。
自分が本当になさねばならないことが、そこには記されていた。
S43は、涙を拭った。
涙は、目の曇りを洗い流した。
その深い深い青の瞳は、曇って見えなかった01ネコリスが見えるようになっていた。
S43は、まだやり直せる。
だが、そうしたら国はどうなる…いま、自分がいなくなれば国は再び曇りかける瞳を国王は見逃さなかった。
国王は考えた。摂政が、悩まねばならないほどの事と言えば、国を抜けることだと悟った。
それ以外の生死がかかる程度では、決して悩まないことを国王は知っていた。
「S43よ、るしふぁ王国国王の勅命に於いて、貴方を摂政の任より解く。」
「な、国王!そんなことなされては国が…」
「黙れ!貴方は誰に向かって口をきいておる?勅命に従わねば処刑台に上がってもらうぞ…」
「も、申し訳ありません。」
るしふぁは、ふふっと笑い
「S43さん、自分の信じる道を歩いてください。それが、僕達の希望でもあります。」
議会場のほかのみんなも、ちょっと笑顔でうなずいてS43がいなくなることを察した。
テルだけが、我慢できずに「…S43さん」と小さくつぶやいただけだった。
S43は、手馴れた手つきで脱藩の書類を仕上げると。
国王に手渡した。

「それでは、いままでありがとうみんな。正義を貫いてきます。」
そういうと、S43は議会の出口に向かって行った。
目の周りと鼻が赤くなっていたが、その顔には決して後悔の念は無かった。
特にその青い瞳が印象的であった。
その顔を見ると01ネコリスは、自分は間違ってなかったというふうにニッコリ笑うとS43の肩によじ登った。