(ある意味)奮闘記



 タマ暗殺作戦の行方とかおのれタマとかたけきのこさん助からねば暴動だとか
本日ばかりはちょっと置いといても、お願い許して!
何てたって本日は、乙女の一大イベント・ヴァレンタインデーである。


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その夜、鷹臣はこじんまりとした家の中でも特に使い込まれた形跡のある一角、キッチンで孤軍奮闘していた。
時刻は既に夜中の2時を指している。

ああ、何故こんな時に限って急患が!それも立て続けに。
ついでに言えばあの野郎ども…!妻と夕飯がだと!?彼女がチョコ持って来てくれたからだと!!?
独り身だからって今日が暇だと思うな、馬鹿どもがぁぁぁ!!

相も変わらず思考は口から駄々漏れである。
たかが2時間。されど2時間。昼間の激務に体力を根こそぎ持っていかれた体には辛いものがある……なんてことはなく。
キッチンが見えるリビングのソファに寝そべり、先程から欠伸を噛み殺しているクリスと銀河は知ってる。
この女、御菓子作りの時はどれほど疲れていようともハイテンションになる事を。

少し前に練習で作ったフォンダンショコラは後日(主に自分の楽しみの為に)作ろう。
実験台にしたるしふぁ王とはやての反応は悪くなかったが、アレは出来たてでなければただのチョコマフィンだ。
(チョコマフィンとフォンダンショコラを一緒くたにすることが許せるものか!)
と言うわけで、作り慣れたレシピの材料を前に鷹臣は気合を入れ直した。


かくして2時間後。何かをやり遂げた顔で鷹臣はリビングへとやってきた。
その手にはワンホールのガトーショコラ。
もう片方に持っているのはパヴェ・ドゥ・ショコラ。
所謂生チョコだ。

そうして両手の渾身の作品をテーブルの上に置くと、ばたりとソファに倒れこんだ。

「だ、駄目だ…もう、眠い……。」

一に睡眠二に睡眠、三四がなくて五に食事。
それでもって先輩は欄外特例最優先項目よー。
鷹臣の人生はそれをモットーに出来上がっていた。

目蓋が落ちてくる。
ガトーショコラ、先輩に食べて欲しいけど、けっきょくみんなに、ばらまくことになるんだろうなぁ…。
ああ、このあいだいなくなっちゃったS43さんにもとどけなきゃ。あまいのだいじょうぶかな。
いつかかえってきてくれるといいな。
記憶があったのはそこまでだ。


後は知らない。
翌日の出勤とか、もうそんなのは大分如何でもよかった。


ハッピー ヴァレンタイン ?