バレンタインタイムアタック



 2007年2月14日
好きな人に黒くて甘い塊を送る日
それを思いっきりすっとばしたおばかさんがいる。
「バカじゃないって! 忙しかったし,忘れてたの!」
そういって王宮の厨房の一角を借りて甘い匂いを漂わせているのはクレールである。
今から第一世界でチョコレートを送るのは気が引けるので,せめてその日のうちに何かしたい,そう思って材料と調理場を借りている。
バレンタインデーが終わってしまうまで,第一世界計算で残り1時間30分。
せめてこの間に作り上げておきたい。 恋する者としての意地である。

少なくとも無事であると,他の人のチョコを受け取る描写であれそれを知ったからにはもう怖いものがない。
その心を抑え付けるものは何一つなかった。

「さぁ,ここからはアイドレスでいくわよっ!」
クレールは風を追う者のアイドレスを魂にまとう。

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挑戦者:クレール(森国人+理力使い+風を追う者+星見司)
挑戦イベント:冒険のはじまりより,No2伝説のケーキ作り相当のバレンタインチョコ作り
要求能力1:筋力4 筋力−3 差分−7 自動失敗
要求能力2:外見3 外見1  差分−2 ダイス目21以上で失敗
要求能力3:知識1 知識6  差分+5 自動成功
お宝DM:+4

要求能力2の判定1回目。
[mihaDice] クレール : 1d100 -> 75 = 75
…中間判定。お宝ダイスは…
[mihaDice] クレール : 1d6 -> 2 = 2

結果:娯楽になるチョコレートができました。

要求能力2の判定2回目。
[mihaDice] クレール : 1d100 -> 66 = 66
……中間判定。お宝ダイスは…
[mihaDice] クレール : 1d6 -> 1 = 1

結果:コックさんの同情を誘いました。

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包装に使おうと思っていた時間をギリギリまで削って二回挑戦したものの,
一回目はスーパーボールのように部屋中を跳ね回るチョコレートが出来上がり,
こ,こんなはずではともう一度作ったらチョコのチの字にもならない謎の塊が。

(お菓子作りの才能ないのかな,私……。)
乾いた笑みを浮かべながら心で泣いたクレールは10秒で気を取り直した。
確か,一つだけホテル料理並の出来上がりをした料理があったはず…。

「そうだ,プリン!」

コック長さんにお願いして再び材料を分けてもらう。さっきの失敗がうけたのか,がんばれよ,と応援してくれた。
深呼吸して,心を落ち着ける。
(大丈夫,きっと,大丈夫。)

卵を割り,あわ立てないようにある程度混ぜたところで布でこし,さらに卵黄を加えて味を濃厚に。
牛乳と生クリーム,グラニュー糖とバニラビーンズを次々と入れていき,静かに優しくかき混ぜる。
型にバターを塗り,先ほどの卵液をそそぎ,オーブンで蒸し焼きにすること約1時間。

「できたー!」

カスタードプティングとクリームブリュレのあいのこのような固さのプリンの出来上がり。
カラメルを使わなくても十分甘くて美味しい味に仕上がっており,
このまま冷まして明日の朝食に出してもらうようコックに頼んでから
クレールは別に焼き上げた一人用のカップのプリンを持って自室に帰った。

一つだけ別のプリンには蓋をして,あの人の髪のようなピンク色の紙で包む。
それにメッセージカードを挟んでから鮮やかなブルーリボンを結んで,窓辺に置いた。

(…どうか,届きますように。)

そして次の日の朝にはその包みは彼女の部屋から消えていたが,
ちゃんと本来の届け先に辿り着いたかどうかは彼女に知る由もなかった。