冒険の心得:後悔役に立たず!
『冬の京』で使いこんでいた鞄が破れて使い物にならなくなった。
多分、森の中で遭難した時にどこかで引っ掻けて破いたのだろう。
いつもの感覚で鞄を買うつもりだったのだが持っている通貨はわんわんだったのだ。
難儀している所を買い物にきていたテルさんが間に入ってくれて事なきを得た。
その時に今の使っている鞄を勧められたのだ。
ここで何もしないというもの心苦しかったので荷物持ちをしたのだが…。
テルさんが急にあれやこれやといっぱい買い物を始めた。
気がつけば両手にはいっぱいの買い物袋をぶら下げていた。
皆がテルさんは黒いと呼ぶ理由が少しだけわかった気がする…。
ふと、いっしょに酒屋にはいってウィスキーを買おうとした時に『冬の京』限定のウィスキーを持って来ていた事を思い出した。
その旨を伝えるとテルさんは凄い勢いで歩き出し『早く!早く!!』と両手いっぱいに荷物を抱えている俺を急かせて逗留しているホテルに向った。
両手いっぱいの荷物を先にテルさんの家に運んでからホテルの部屋に行きウイスキーのボトルを出した。
ただ、ボトルにはラベルはなくただの瓶だった。
そう、製造された蒸留所の名前がそのまま市場に流れるのが通例である。
『冬の京』の地名がにゃんにゃん共和国に流出するのを避ける為に先にラベルを削ったのだ。
個人レベルでは仲良くなれても藩国ではそうもいかないのである…。
取り出したウイスキーは『シングル・カクス』という種類である。
一つのたるのモルツ原酒のみを瓶詰めしたウイスキーで『シングル・モルト』とは少し違う。
『シングル・モルト』にするとどうしても加水してしまうので40度前後になってしまうが『シングル・カクス』は加水しないので60度ほどあり寒い『冬の京』ではこちらの方が喜ばれるのである。
テルさんはマイグラスを持参して飲みたそうにしているので開封した。
部屋にウイスキーの独特の風味が漂いテルさんの瞳も輝いてきた。
グラスを差し出して催促するので少し変わった飲み方を勧めてみた。
一つは『フロート』と呼ばれ、水の上にウイスキーを浮かべて飲む方法。
もう一つは『ミスト』と呼ばれ、クラッシュドアイスで満たしたグラスにウイスキーを注いで飲む方法である。
まあ、普通は水や氷を加えずに飲むのが主流である。
気がつけばボトル一本が空いていた…。
俺は割と平気なのだが通常より高い度数のウイスキーをいつものペースで飲んだテルさんは…。
これ以上は俺の生命に関わる事なので伏せてさせていきます。
まあ、凄かったとだけ明記しておきます。
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