HAPPY BIRTHDAY!



鷹臣はグッタリしていた。
疲れ果てて動かない、否、動けない。
これがレトロなゲームであれば、画面に『うごかない ただのしかばねのようだ』と表示されるところだ。

だが、実際は時折這うようにのろのろと動き、ふらふらと何かにぶつかりながら進んでいく様は、その地を這うほどに伸びた黒髪のせいもあり、まるで幽鬼のようであった。

そして、そんな死に体な鷹臣がたどり着いたのは、国の外れにある一つの碑の前だった。
そう、この日だけは何としてでもここに来る必要が彼女にはあった。
鷹臣が鷹臣足るために。

目的地に到着した安心感で気が緩み、どさりと地面に座り込んだ。
頬に当たる碑の冷たさが心地よい。

嗚呼、もう少し早くこの国に来てれば先輩に会えたのに……。
彼女の都合のいい脳は、一緒に付いてくる人物の存在を綺麗サッパリ無視している。
曰わく、精神衛生上の問題らしい。

嘘でも何でもよかった。
その日があって、それに感謝出来ることが嬉しかった。
見上げた空は高く晴れ渡っていて、春の、更にその先に待っている初夏の気配を感じさせる。
嗚呼、いい日だ。

ポカポカの陽気に促されるまま、鷹臣の意識は久し振りの眠りへと落ちていった。