食料増産宣言

現在、共和国謎の直進する要塞艦が現れ、にゃんにゃん共和国は戦時体制下に置かれていた。
るしふぁ王国も他の藩国同様に戦時体制下に置かれ食料増産の命令もでていた。
国王は、そんな中いらだっていた。
昨晩戦時体制に入ったと言うのに、新人面通しの後に3名ほど主だった家臣が神殿からいなくなっていたのである。
さっきまで、部屋で食料増産に関して話し合っていた摂政までも神殿にいないという。
多くの家臣は、それぞれの執務室に戻り作業を開始したと言うのに、何を考えてるんだ。
そんなにぼくは王として本当にリーダーシップはないのか。
確かに、ぼくは、所詮世襲の王だ。
それに、家臣はアルフォンスに忠誠を誓っているのであって、僕にじゃないのかもしれない。
少し涙が出た。
それでも、やらなきゃならないぼくは王だ。
そう考えると、るしふぁは机につき。翌日に予定されていた臨時国会の書類作成を開始した。

とんとん

部屋の戸が、叩かれた。
うとうと、としていたるしふぁは、はっとして。ぶんぶんと頭を振った。
窓の外を見ると、朝日が昇り始めていた。
「S43です。」
昨晩、新人の面通しのあといなくなった一人であった。
神殿からいなくなりこんな時間に現れるとは、どうしたというのだろう。
「どうしました、どうぞ中に入ってください。」
「失礼します。」
そういって、S43は一枚の紙を取り出し、るしふぁの前に置いた。
「これは?」
「昨晩、星見台に戻り神木へリンクし、状況を整理してきました。今後を見据えますと兵站は味方の士気に多大な影響を及ぼすと考えられます。」
「なるほど」
「そこで、食料の増産に関わる政策を作り上げてきました。本日の議題に是非入れていただきたく思い、朝早くに失礼させていただきました。」
よく見ると、S43の目の下には、クマが出来ていた。
きっと、星見台に直行して、状況分析を行いここまで、綿密な食料増産案を考えていたのだろう。
しかも、読めば分かるが計画は単なる当面の一時的な増産ではなく、将来的な増産にも伸びるそんな内容だった。
「この計画を一晩で考えたんですか!?」
「いえ、計画自体は、もっと前からあったんですがね。今回の件で、急ピッチで作り直したんですよ。ちょっと、微妙な部分もあってお恥ずかしい。」
「じゅ、充分ですよ!これで」
「さっそく、国会の時間を早めて審議しましょう。でも、みんな集まるかなぁ」
「大丈夫ですよ、もうあらかた集まっています。」
「え?」
国会議場に入ると、すでに、国会には多くの主だった家臣が来ていた。
というよりも昨晩から神殿に残っていたのだろう。
疲労は見えるもののどの顔も笑顔だった。

「おはよーv」
「おはようございます。」
「おはよう。」
「にゃー。」

来ていないのは、更夜さんとぷーとらさんくらいか…どうしたんだろう?はっぷんさんもいると言うのに、でも国会をやるには充分だ。
はじめよう。

「というわけでしてね、本件を決議いたします。」
S43による、綿密な企画書は改善する案が見つからないほどよく出来ていた。
決議の早いことで有名な(たとえば立国)うちでもこれほど早いことは珍しいくらいだった。
「では、本件を発表しようと思います。では、各自作業に当たってください。えと、今いる文族は、ちゃきさんとかすかさんですね。文章の作成をお願いします。」
「了解ネウ」
「おー、オレも手伝うからなんかあったら言ってくれ。
「ゆうみさん、ありがとネウ」」

作業は、滞りなく進んでいった。
再び自室に戻ったるしふぁは、悩んでいた。
未確認の敵が一方的に進行してきている事実を国民に伝えて果たして、すぐに受け入れられるだろうか。
しかし、それでも伝えなければならない。
ぼくがやらなきゃ、誰がやるんだ。そう自分の聞かせているうちに、部屋の扉がなった。

とんとん
「テルです、アルフォンスさまのお召しかえは終わりました。」
「ありがとうございます、ぼくもまもなく行きます。」

あの扉を抜けたら広場が見える露台だ。
今回は、事前連絡がないのであまり人が集まってないだろうが、それでも形式上やらねばならない。多分放送用のカメラがあるのが関の山。そんなことを考えながら、露台に向かう通路の途中、二人の男がいた。
「なんとか、間に合いましたね。」
「なんとかね、いやあ疲れた」
「更夜さん、ぷーとらさん……いままでなにを?」
更夜は、この寒い時期にも関わらず額の汗を拭きながら笑顔で
「まあ、露台に出てみたら分かりますって。」
先に行った、アルフォンスが手を振っているのが見える、そして大きな歓声が…
るしふぁは、耳を疑った。いま決まった布告に国民がそんな早く集まるなんて、ただでさえ朝が遅いにゃんにゃん共和国の民が集まっているんなんて。夢じゃなかろうかとさえ思った。

しかし、それは夢でも幻でもなかった。
広場には多くの国民が自分の布告を待っていたではないか。
しかも、多くの民が手には備蓄してある食糧まで携えている。
あるものは小麦袋、あるものは果実の袋、あるものはかご一杯の魚。
「更夜さん達のおかげですよ。」
S43が、るしふぁの耳元で囁いた。
「二人とクレールさんでで手分けして、南部市街と北部市街「同胞がやられてなんとも思わんのか」って行ってまわったらしいですよ。朝まで町中でこのことを知らせてまわってくれたおかげですよ。」
露台から通路をみる。
更夜とぷーとらは、二人して親指をたてて、にかっと笑っていた。
広場を向くとカメラのシャッターが切られ、放送のカメラが回りだす。
あいかわらず、アルフォンスさまはにこやかな笑顔だ。
「にゃはは♪」
るしふぁは、露台から国民を見渡し、一呼吸置いて、澄んだ声で宣言した。

静粛に!
我は、これよりアルフォンスの名の元、宣言を行う!