星見台の猫医師


オレはは何故またちゃきをボコらなければいけないんだろう、そう考えていた時。
ふと夜空を見上げると、星が降ってくるみたいに見えた。

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ちゃきがオレに弟子入りしたのは、今から半年ほど前。
あの頃、オレはトリプルエースであるちゃきをエース扱いしていなかった。
尊敬という意味でも、エースはみんなのおもちゃです、という意味でも。

ある日ちゃきは、オレを紹介する時に
「色んな師匠です(笑) 」
などといきなり言いやがったのだ。
わけがわからなかった。

少なくとも世界の謎に関しては、エースであるちゃきの足下にも及ばなかったし、
ただよく話す友達ぐらいにしか思っていなかった。
それが、よりにもよって師匠だと?まぁ、半ば冗談だろう。
はじめはそう思っていた。

「いったいお前はオレを何の師匠だと言いたいんだ?」
オレがそう尋ねると、ちゃきは言った。
「漢前の、です。」
ああ、それならわからんでもない。
ちょっと本気にした。

考えれば、エースというのは統計学的に言えば信頼区間から外れた存在で
世間一般からは逸脱しているのがあたりまえなのかもしれない。
かなり本気にした。

オレは今でこそ、これぞ森国人といわんばかりの体つきをしているが、
小さい頃はとても森国人とは思えないほど太っていた。
母親も岩国人かとおもうような体格だったから、
並大抵の努力で痩せられるとは思えなかたったので
女の子としてかわいくなることは早々にあきらめた。

そして。
男の子としてかっこよくなることにした。

そっからはまぁ、服を男物にするとか、口調をそれっぽくするとかしてみた。

くわえ煙草にあこがれていた時期もあった。
けれど煙草は吸わなかった。
未成年どころかまだ子供だったし、何より煙草の煙が嫌いだったからだ。
シガレットチョコをくわえてみたこともあったが、すぐにやめた。
すぐに溶けるからだ。
パイポも試してみたが、どうもしっくりこないのでそれもやめた。
結局は「煙草を吸う=かっこいい」ではないということで終了したけれども。

というわけで、だ。
漢前と言われるのは嬉しい。
本気で嬉しい。
努力が実ったのだと思える。

うーん、そう思うと。
ま、弟子の一人ぐらいいてもいいか。

「弟子にするのはいいけど、1つだけ条件がある。」
ちょっと真面目な表情で言ってみた。
こういうの、言ってみたかったんだよねぇ(笑)
そしたらちゃきは、
「条件、ですか?」
ちょっとビビりながら聞いてきた。
ニヤリ、として条件を提示してみる。
「オレよりカッコよくなれよ!それが条件だ。」
さぁ、おまえはどう出る?
「わかりました、がんばります!」
よし、よく言った!

それからオレ達は、師弟という関係になった。

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考え込んでいるうちにいつしか合わなくなっていた焦点を、もう一度星空に合わせる。
うん、星が綺麗だ。
まぁ、いいから早く卒業しろよ。
そしてその前に。

オレより若い奴はみんな、オレより先に死ぬなよ。
もうあんな思いはごめんだからさ。