るしにゃん王国漁港
ぽっぽっぽっぽ
漁船が、何艘か帰ってくる。
にゃんにゃん共和国の朝は遅い。
もう少しでお日様が一番高いところにたどり着く時間帯である。
るしにゃん王国の猫達の休日の楽しみといえば、湖での釣りが人気である。
といっても、数多く釣って競うわけでもなく、
一日中糸をたらして日なたでうつらうつらしながら、その日食べる分だけ釣って帰るだけである。
そのため、大抵の猫達は小さい竹竿と小さなかごを持って釣りをしていた。
善良な老猫のコテツもそんな一日を過ごすべくここにやってきていた。
「やあ、トメキチさん。釣れてますかにゃ?」
「いつも通りネウ……ふぁあ」
顔なじみに挨拶すると、早速、糸をたらす。
途中で買ってきたスポーツ新聞に目をやると、ニャンキース地区優勝の文字が一面を飾っていた。
ごひいきチームではないらしく、老猫は社会面までぱらぱらと読んでいく。
星見司選抜試験2名不合格
なんとなく目にとまった文章だった。
なんでも、臨時の国家認定の星見司試験にわが国からも2名を選抜して試験に挑んだらしいが、
ことごとく不合格だったらしい。
「トメキチさん、この星見司ってのはなんのことにゃ?」
「はあ?なんでも星のこと研究する人達らしいネウ。昨日ニュースで見たネウ。」
「星見台にいるえらい学者さん達かにゃ?」
「なんでも、あんな人たちは共和国にはいっぱいいるらしいネウ、その中でも頭のいい人たちを集めてるらしいネウ。」
「はあ、頭のいい人らのやることはよくわからんにゃ。」
そういって、スポーツ新聞を足元に置くと、早速暖かな日差しの元うつらうつらとし始めた。
ぴくっ
「うわっ、来たにゃ!重い!!」
大きな獲物がかかり竿がしなる、そのあまりの大きさに体ごと持っていかれる。
コテツが、海に投げ出されそうになったそのときだった。
がしっ
誰かがコテツの体を掴む、さらに、もう一人いたのか竿に手を添えてくれた。
コテツは、その二人の協力もあってなんとか大物を釣り上げることに成功した。
「いやあ、助けてくれてありがとにゃ。」
「いやいや、気にしないでください。」
と技術者風の男が応える。
「こんな大物が釣れたら今日は、このまま昼寝できますにゃ。ん?その服装はもしかして神殿のお役人さんですか?」
「下っ端なんですけどね。」
ともう一人が、苦笑いしながら応える。
「そうでしたか、いつもお疲れさまにゃ。こうして、釣りが出来るのも神殿のみなさんのおかげと聞いてますにゃ。」
ふたりは、昨日のことを思い出してちょっと落ち込んだが、それ以上に励まされた。
「それじゃ、お二人がおいしい魚が釣れることを祈りますにゃ。おやすみ〜……」
そういうと、コテツは再びまどろみ始める。
その様子を見てコテツを助けた二人は、自分達も釣りを再開し、片方が、話を始めた。
「たまには、こういうとこに出てくるのもいいものですね。」
それを聞いてもう一人が笑顔になって
「そういってもらえると、連れて来たかいがあります。」
「それに、気づいたこともあります。神殿に篭っていたら国民の人たちには会えないんですよね。」
「そうですね、どうしたんですか?」
「いや、この平和な日が、続けばいいなと思ったんですよ。
僕は、みんながこうして釣りでもしながら楽しくやれる、平和のために戦うのも悪くないと思えてきました。」
それを聞いて、もう一人が大きく頷いて
「そうですね。それじゃ、そろそろ戻りましょうか。星見司試験不合格なんて気にせず、次いきましょう!はっぷんさん!」
「そうですね、ちゃきさん」