空気の澄んでいるるしにゃんの夜空は今日も綺麗だ。
そんな寒空の下防寒具も纏わずに王宮の屋根の上で満天の星空を眺めている鷹臣の目には、
散りばめられた星星に照らされ輝く来須銀河の幻覚がソフトフォーカスで見えていた。
確実に禁断症状である。
「ふっ……所詮世の中金か…!!」
「……荒んだ発言だな、オイ。」
ギリギリギリギリ。
何だか星明りも届いてなさそうなくらいの暗いオーラとお行儀の大変よろしくない歯軋りを遮る声があった。
「……坊や、何してんの?」
「お前が縛り上げて強制的に連れて来たんだろうが――ッ!!」
「煩いよ。」
「理不尽ッ!?」
他のゲームではグラップラーなのよ、パワーでごり押しなのよ。
鈍い音と凄まじい衝撃にはやての目の前に星が飛ぶ。
如何でも良いがこの女、森国人としては身体能力良過ぎやしないか。
専ら、日々虐げられている藩王とはやての意見だ。
「15億……15億払って、先輩が他の女といちゃつく様を見ろって!!?
出来るか馬鹿!!
そんなことしたらブロークンハートですーぅ!!
乙女心は天地無用で丁寧に扱ってと何度言ったら分かるのさ!!」
「…誰が乙女だ、誰…がッ!?」
「黙れと言ってるのが分からんか!!っの、チンチクリンが!!!」
頭に続いて鳩尾への爪先がめり込むほどの蹴り。
体格的にははやてよりも小柄な鷹臣だが、出会いからこっち全戦全勝である。
「こうなったら稼ぐぞ、29億!!
王の身包み剥ごうが、はやてをオークションに掛けようが、
アイ ニード 29億!!」
「ちょっと待てぇぇッ!!今、今なんか不穏な発言なかったか、このチビッ…ひぃ!!」
「……ちょぉ―――――っと、お喋りが過ぎるんじゃないのかなぁ?坊やぁ…?」
「ぎゃぁぁぁぁ―――!!絞まる絞まる絞まるぅぅぅ!!!」
そうして今日もるしにゃんの空に悲鳴が響く。
「絶ッッ対、先輩に会うんだからぁぁぁぁ―――――ッッ!!!!」
おしまい