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共和国による、大規模戦。
その戦場を、一人の男が走っていた。男は、名をぷーとらという。乙女の異名を持つ男であり、二つの祖国を持つ男であった。
彼は、常に走り続けた。
共和国の中でも大国であるよけ藩国の吏族として、戦況をつぶさに捕らえ報告しつつ、るしにゃん王国の戦場で戦い続けた。通常、不可能を可能にしたのは、身体的な能力だけではなかった。彼は、共和国のみならず、帝国の連中にまで乙女と呼ばれていた。が¥しかし、それは男らしさが無いということではなかった。文官である彼の文章が女性的であったことであらぬ疑いを持たれたことに起因する。また、ちょっとそういう成分が、行動の端々に現れたりすることもあった。それでも実際のところ、彼は仁であり義であった。
そのために彼は、走り回っていた。
戦況がめまぐるしく変わる、S43の元から海法藩王の元へと走っていた。
弾丸の行きかう戦場を走り回りながら、ぷーとらは、昔のことを思い出していた。
るしにゃん王国を出て、海法藩国に行ったあの日のことを
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それは、るしふぁ王国建国前夜のことだった。
ぷーとらは、国家の草案としての都市設計や漁業に関する物をまとめ設計を行っていた。
「るしふぁさん、酒蔵に関する資料とかありませんか?」
「ちょっと、待ってください…えっと、これでいいですか?」
「おお!いいですね、ありがとうございます。」
その執務室に、S43が入ってきた。
「王様、建国に関する、法律が発表されました。」
そいうと、S43は持っていた資料を二人に手渡す。
「どうやら、うちは問題なさそうですね。」
そう言ったるしふぁとは、対照的にぷーとらの顔は蒼白になっていく。
「どうしたんですか?」
S43は、すでに知っていたのか黙っていた。
ぷーとらは、資料を握りつぶさんばかりに
「こ、このままだと海法さんが危ない。」
「え?」
「ここに書いてある、法律が適用されると、よけ藩国の都市計画は全て無効になり工事が行えない。海法さんを助けに行きたい…でも、僕は」
ぷーとらは、その資料を机の上において再び作業に取り掛かかろうとした。
「行ってもいいんですよ。」
「るしふぁさん、僕は海法さんに恩がある、確かにここで返さないでいつ返すんだ…と思います。でも、そしたらいままでの僕の設計したるしにゃん王国の計画が…」
「いいんです。行ってください。」
「そうです、行ってあげてください。我々は、大丈夫です。」
「ありがとうございます。ぼ、ぼく行ってきます!」
「それでは、御武運を」
「今までお世話になりました。それじゃ!」
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そう言って、走り出しちゃったんだよなぁ自分、と思いつつ、走りながら苦笑いになる。
そのあと、色々あって今はるしにゃん王国とよけ藩国どちらにも在籍している。
どちらにも返さなきゃならない恩がある。
そう考えながら、ぷーとらは戦場を走り続けた。
まだまだ走り足りないと思いながら、走り続けた。
「…なんとか、子供を後方に配備できてよかった。」
近頃は、少年の志願兵まで出てきている。
本当に子供だったり、国王と同じ年齢だったり。
せっかく、歳の近い御学友が国王に出来たというのに……。
S43は、作戦が完璧に進んではいたものの、国力をすり減らし、子供まで戦場に借り出すそんな戦争に勝敗以上の危惧を感じていた。しかし、考えている余裕は無かったまもなく戦闘に突入する。忍者のアイドレスをつけた猫たちが次々やってきては、命令を受け取り走っていく。動き出した戦いは、止まらない。
結局は、戦って勝つ。それ以外に、手段はないと思ったS43は、それ以上考えるのを止めた。それが、最善の手段だったから。
その日、にゃんにゃん共和国は戦死0敵母艦全壊という歴史的勝利を手にした。
しかし、それはこれから続く戦いの序章でしかなかった。