星見司第3級試験回答 S43

ステージ2 イベント30 星見司第3級試験に対する回答です。



設問1 星の寓意を実例3つ以上あげて説明しなさい。
○星の一般的解釈

星は夜に輝くものである。
暗ければ暗いほど、燦然と輝く存在である。
太陽が昇る昼には、よほど目をこらさないと見ることはできない。
人工衛星によるGPSも海図も灯台もない昔、広大な海を進むヒトの道標は天空に輝く星だけであった。

昼の海も恐ろしいが、夜の海は更に恐ろしい。
置かれている状況が把握できない。
進むべき方向がわからない。
そんな時ヒトは不安と恐怖を覚える。
そんな時、天空の星は優しく、力強くヒトを勇気づける。
なにも語りはしないが…。

現実の人生も大昔の航海となんら変わらない。
凪もあれば、時化もある。
向かうべき港も戻るべき港も見失うことはままある。
逆境だ。
絶望だ。
逆境も、絶望もやってくる時は、まとめてやってくる。
これでもか、これでもかと。

ヒトはそんなとき天を仰ぐ。
そこに神を見るのか、先祖を見るのか、恋人を見るのか。
それは様々であっても、目の先には星がある。
暗くきびしく、悲しくやるせない現実を突きつけられた時、
ヒトは天空の星を見て、勇気を取り戻すのだ。

太陽と月が絶対的な畏怖の対象であるように、星も神格化して見られてきた。
世界各地にその歴史が残されている。
人が死んで星になる。という概念は国や地域を問わず広く信じられてきた。
アポロジニもエスキモーもそうだ。
偉大な人物は大きな星に、そうでない人は小さな星になる。
人は人の、魚は魚の星になる。
古事記、日本書記には太陽と月(天照と月読)はあっても星の記述は少ない。
それでも農耕に由来する北極星、北斗七星やオリオンへの信仰はあり、和名も残されている。
星と神話の結びつきは、洋の東西を問わず深く、ギリシャ、北欧はいうに及ばず、バビロニア、中国、ローマ、アフリカetc
あらゆる地でヒトは星に神をみる。
ここから派生し、星で吉凶を占う文化は世界各地に根付いていく。
それは運命を示す象徴であり、神の意思の影響でもあることが多い。

無名世界観においても同様である。

○作中の表現例
例示1 RtGからの抜粋と解釈

「それは世界の危機に対応して出現し、世界の危機を消滅させて、また消えていく存在。ありうざるべきそこにある者。
夜明けを呼ぶ騒々しい足音。人が目を閉じるときに現れて、人が目を開く時に姿を消す最も新しき伝説。世界の最終防衛機構」
「それは世界の総意により、世界の尊厳を守る最後の剣として、全ての災厄と共にパンドラの箱に封じられていた災厄の災厄。
自ら望んで生まれ出る人の形をした人でなきもの」

抜粋ココまで

「それは、夜が暗ければ暗いほど、闇が深ければ深いほど、燦然と輝く一条の光」
RtGでそう口にする舞に、速水になったキイクニは伝説をみた。
絶望の中の絶望。
ただ生きるという本能で生きているだけの状態から本当の意味で生きる道を歩み始める。


例示2 同じくRtG(16話)からの抜粋

 それはどれだけ離れていても、光り輝く黄金のすばる。
それは我らが得たる最後の絶技よ。

 星の輝きを我が胸に。貴方を想う喜びを。
絶望の海への航海も、今なら怖れずできるだろう。

例示3 GPO白の章、空のセリフの抜粋

「教師は明かりだ。
生き方の明かりにならなきゃ、 子供達の行く先を照らす事は出来ん。 」
「俺が明かりになりうるほどの人間ならば、 いつか、生徒は暗闇で俺を思い出すだろう。 」
「手本じゃない、明かりだ。
昔はただの思い出だ。
俺を真似しても意味がない。
実際のところ、どんな偉人の真似をしても仕方ない。
昔はただの思い出だ、未来とは違う。
昔の真似をするんじゃなくて、超える事を考えなさい。
だから、明かりなんだよ。
真似されるための目標ではなく、 俺は、未来を照らすのだ。
心もとないかも知れないが、後ろからの明かりなんて、 いつもそんなもんだ。」
「東原 希望は、あの子は昔、ラボの実験体としてひどい目にあった過去があってね。
…だが、それで終わったら面白くないだろう。
あの子はあの子のやり方で戦う事にしたのさ。
この空を覆う、ほの暗い何もかもと戦うんだ。
彼女のその力は天下万民のためにある」

例示4 電網適応アイドレス<Hello new world>(4)
 http://blog.tendice.jp/200701/article_102.html より抜粋 トーゴの言葉
「そして心が曇っている人間がいたら、澄んだ空や輝く星を見せなさい。
 我々は星ではない。だが星の話をすることは出来る。
 それはあると、曇り空の下でも言うことが出来る」
「後藤くんが微笑んだのならそれは私の力ではないな。
 それは星の輝きの問題だ。
 それと、この子の目のよさの問題だ。
 星が輝き、それが見えたから空は晴れている。」
「本当に偉いのはこうだ。
 誰がどう言おうと、努力を続ける。
 君のセンセイは、君のために偉くなるべきだ。
 本人もそう願っている。
 それだけだ。
 それが<ことわり>というものだ。
 誰がどう言うかは関係がない。
 我々がルールと思うものが<ことわり>。
 我らのことわり、それは貴方のために我々が努力する」

○その解釈

星がヒトのこころに光を照らすのは、周りが暗く、他によるところがないからだ。
昼間にも星はある。
太陽が明るすぎて見えないだけだ。
そんな時ヒトは星に気付かない。
闇がこの世を覆う時、星は輝く。
その暗さに対抗するように。
どれだけ絶望という闇が、夜が、続こうと明けない夜はない。
ヒトがそれを信じる限り、努力を続ける限り。
だが、黙って目を閉じて震えていても、夜は続く。
だから、戦うのだ。
空を覆う、ほの暗い何もかもと。

星は暗闇に灯る、道標であるが、それが助けてくれるわけではない。
闇を払うのは自身である。
そうやって戦う者は人であって既に人でなく、見る人にとっては、物語の中の存在である。
物語をみて、ひとは心を強くし、それぞれのやり方で闇と戦う。
そして夜明けは来るのだ。
誰か一人が夜を終わらせるのではない。
それぞれが戦わなければならない。
心が折れて、闇に飲み込まれる前に、星を見て、立ち上がることが大切なのだ。

人が迷うとき、それを助けるのは他人ではない。
星を見つけるのも、努力するのも本人だ。
他人にできるのは、それと戦うことができることを示すのみだ。

無名世界観で星を引き合いに出すのは主に教師や先生という立場の存在であり、実際の手本や助力でなく標としての希望を示す。


設問2 瞳が青いの寓意を実例3つ以上あげて説明しなさい

例示1 Aの魔法陣ルールブックより抜粋

「リューンが味方する真なる勇者は体の中の海である瞳に、青い光が宿る。
 本来目に見えず、力ももたないはずのリューンが、鼓動をもって顕在化した証拠である。」

「SDが感情などを抽出条件にしたというプレイヤーに対する意思表示。
 多くは、正義を体現したと判断するプレイヤーに対してSDができうる最大の助けとして行われる運用措置をいう。」

抜粋ココまで

GPM23当時の情報で「瞳の色のルール」というものがある。
第5(あるいはGPM)限定という話があるが、RtGにも「青く輝く瞳」という表現はある。
瞳のルールでは他世界との連結、あるいは前進・停滞のしるしとして表されていたが、これとは別の意味があると考えて妥当だろう。

例示2 RTG(16話)より抜粋

 背中に殺気を感じ、瀬戸口は背筋を伸ばした。
壬生屋の木刀が、瀬戸口の肩越しから伸びてきている。
「そう、貴方は女の敵です。滅しなさい」
「……あのな、どうしてそういう結論になるんだよ」
「いやらしいのです!」
「そういう想像するほうがいやらしいんだ!」
「おだまりなさい!」
 瀬戸口は背中を見せたまま、壬生屋の袈裟斬りをののみを抱いたまま避けきった。
続く斬撃を身をひねるだけでかわす。紫の瞳が青く輝く。

 血走った紅い瞳を見せて舌打ちする壬生屋。
「……うまくなりましたね」
 ののみを下ろして髪を整える瀬戸口。
「命懸けだからな。昔とった杵柄かもしれないが」
「意味が分かって言っているのですか!?」
「男と女の関係だろ?」

抜粋ココまで

Aマホの記述に従えば、壬生屋の斬撃をかわすという瀬戸口の行動に正義があり、感情などが抽出条件にされたことになる。
壬生屋の眼は、本来青く、ここでは嫉妬の感情を「血走った赤い瞳」と表現している。
それとは対照的にののみを守って回避する瀬戸口の瞳は紫いろだが、青く輝いている。
生きようと、或いは、未来(ここではその象徴としてのののみ)に繋がる行動に対して、リューンが助力したと見るべきか。

例示3 
Aの魔法陣によるエースゲーム(ぽち救出ターン2後半(感想戦まで))
http://blog.tendice.jp/200605/article_5.html より
SD:全部通った。みんなの目が青くなった。
都:よし。(抽出基準に精神的なものが含まれるですよ<青い瞳)

上記ルールの適用事例。
OKとエース陣の因縁が深まった事件のリプレイだが、ポチ救出で決死の戦いをするエース陣に正義を見いだし、リューンが力を貸している。

例示4
アザント討伐戦外伝 赤鮭・香川救出篇(2)
http://blog.tendice.jp/200612/article_1.html より
帽子から小さく見える薄目をあけて遠い未来を見るロボの瞳のその全体が青く青く輝き始めた。
その輝きは豪華絢爛なるものにして、それはロボが生まれる前からずっとそうであったように、絶望の天敵として闊歩をはじめていた。

ロボが瞳を輝かせて守るのは、未来=子供の願うもの。
リューンは過去でも現在でもなく、未来を守る為にその力を貸すという意味が込められていると読める。

おまけ
http://blog.tendice.jp/200610/article_5.html
スーパーサラリーマンであるロボのネクタイピンも”青く輝く”「エチオピアの瞳」である。(笑)

○解釈
瞳が青く輝くのはリューンの活性化を示すが、その色はオーマによらないと思われる。
単なる正義ではなく、子供、未来に通じるその時、他のなににもよらず、リューンが助力することを示している。


設問3 にれの木の木陰の寓意を実例3つ以上あげて説明しなさい。

北欧神話ではニレ(elm)とトネリコから最初の女(embla)と男を造ったという
ギリシャ神話ではオルフェウスが悲しみに暮れて弾いた竪琴の力で生まれたとする
このほか、葡萄とのつながりでディオニュソスの聖木だとか、モルフェウスの繋がりからその下で眠ると悪夢に襲われるとか
色々と神話に結びつく木である。

例示1 BINGOボーナス
http://blog.tendice.jp/200603/article_54.html より
にれの木が、風もないのに揺れた。

 にれの木の陰から造作もなく現れたのは、ミーシャが見たこともないような筋肉をした蛮人だった。
ミーシャが盗んだどの宝石よりも美しい、深い深い青い色をした瞳が印象的な、肉であるにも関わらず鋼鉄のような印象を与える肉体の蛮人だ。

例示2 14日目(昼)39 エースゲーム(前編)
http://blog.tendice.jp/200612/article_96.html より
SD:さて、是空さん
是空:はい。
SD:貴方が出てくるのはにれの木の陰からだ。

例示3 電網適応アイドレス<Hello new world>(3)
http://blog.tendice.jp/200701/article_99.html より
傍のにれの木の木陰から、大きな人がふわりとでてきた。

例示4 投票ボーナス4 谷口&咲良
http://blog.tendice.jp/200701/article_107.html
「本来はそのバランスを取り戻すための存在がいる。
 どこの世界にも、何もなくても、本来は人がいるその限り、それは夜が暗ければ暗いほど、闇が深ければ深いほど、
 天に星が輝きだすそのように、にれの木の木陰から出てくるものだ。事実はどうあれ、さも当然というように」

例示5 Aの魔法陣ルールブックより抜粋
大樹の盟約
「全国各地のご神木とはてない県で結ばれた盟約のこと。
 故国防衛のための相互扶助を明記し、はてない県人が猫の通り道を通ることを許可している」
ご神木
「勇者は木陰から猫の通り道を通って姿を表す。
 具体的にどこの木の木陰かというと、古い立派な木で長らくその土地を見守って来たものを言う。
 これをご神木という。」
猫の通り道
「猫がふだん利用している異世界の道のこと。
 勇者は猫の王の許しを得て、猫の通り道を通行する事ができる。」

○解釈
ターニは女王アナルールに、是空さんは知恵者に、それぞれ召還されて現われている。
例示3では怯える亜細亜のこころを救いにトーゴが現われる。
そこにはネコリスや猫がいる。

楡の木は街路樹に用いられたりするように、強く樹齢を重ねれば30mに及ぶ広葉樹で「ご神木」に成りうる木と言える。
はてない県の勇者は現実を侵食する敵性ファンタジーと戦う存在であり、これもまたファンタジーである。
にれの木陰からあらわれるというのは、
「世界のバランスがかたむく時、ファンタジーと戦うファンタジーが現れる」
「現実(的)でない敵と戦うのはこれまた現実(的)でない存在である」
事を示している。

設問4 投票ボーナス4 谷口&咲良に寓意があることを推定しなさい。

寓意は、直接的でない表現の裏に実際に伝えたい意味を隠した表現方法で、隠された意味を指す。
ここで、このSSが公開された事の背景をみることで寓意があるのか、否か、或いは、その意味を類推する。

現在はアイドレスの開催中であり、しかも大祭と呼ばれる期間にあり、これと関連する内容であることが容易に推測できる。
現在の状況としては、はじめての大きなイベントである戦争が行われ、勝利できなかったわんわん帝国サイドでは、粛清の嵐が吹き荒れている。
また、一部藩国の不正行為の告発や天領に籍を置く尚書への反逆というネガティブな雰囲気が蔓延し、その余波は
電網適応アイドレス<Hello new world>(4) (http://blog.tendice.jp/200701/article_102.html)でも描かれるところとなった。
このメタ的なSSの登場人物である亜細亜を勇気づけるべく現れたトーゴとオーバーラップするセリフを石田の記憶の中の空が話すシーンがある。

引用
「本来はそのバランスを取り戻すための存在がいる。
 どこの世界にも、何もなくても、本来は人がいるその限り、それは夜が暗ければ暗いほど、
 闇が深ければ深いほど、天に星が輝きだすそのように、にれの木の木陰から出てくるものだ。
 事実はどうあれ、さも当然というように」
「それは」
咲良が震える声で尋ねると、空先生は優しく言った。
「それに名前を名づけるのが石田咲良、お前の運命だ」
引用終わり

設問3に挙げたようにトーゴもにれの木陰からあらわれている。

この二つのSSは同じ日に公開されており、(また、前日には引用したセリフと同じ事を作者である芝村さんが日記に記している)
両者には同じメッセージが込められれていることを類推しえる。

設問1から3も同様の意図で出題されたとすると、本設問及び続く設問5も同じであると考えられる。

作者には伝えるべき思いと意図があり、タイミングも状況も揃っている。
よって、「投票ボーナス4 谷口&咲良」には寓意が込められていると推定できる。


設問5 投票ボーナス4 谷口&咲良の寓意はなにか。

設問4に書いたように、込められた寓意は現在のアイドレスの状況に即している。
描かれる状況は、事故により、学兵である吉田の指が失われた事で谷口が失意の中にあるところだ。

彼等の部隊は本来前線にある必要性はなく、若い彼らには守るべき未来も帰るべき場所も別にあったはずだ。
そういう不運な状況下で部下の全てを無事に帰すということが、谷口と石田の目的であり、強い結びつきの源であった。

そんな中でこの不幸な事故は、大きな意味があり、谷口の失意は絶望という闇の淵にあると考えられる。

そんな時にこそ、姿はともかく、谷口にとって、幼く庇護すべき対象の石田の言動は、彼の心に一条の光を灯す星になり得たと思われる。
にれの木陰から現われるファンタジーではなく、あたかもそのように振舞う石田が谷口の心を守るというところにこそ意味がある。

”失われたもの、取り返すべき物。”
”人の過ちは、人が返す。”
”往々にして、いや、ほとんどの場合、返すのは過ちを犯した本人ではない。全然関係のない人間の方が、ずっと多い。”
”それでもましなのだ。人間以外の物に、返させようとするよりは。”

このSSに込められた寓意は”人の過ちは、人が返す”べきだという点にあるのではないだろうか?
石田の過ちで吉田の指が失われた訳ではないし、谷口の心が痛めつけられるのもそうではないが、
得体の知れない超越者ではなく、石田が照らす光で谷口が立ち上がる。

これをふまえて、現実をみると、
今回のプレイヤー内の不穏な雰囲気は直接的な当事者でなくても、やはりプレイヤーがどうにかすべきことだというメッセージがあると読み取れる。