○長弓兵の登場
「るしにゃん弓兵部隊、パワーアップしました!」
「……ええと、何処が?」
〜初出撃時における、某国兵士との会話記録より
屋根の上で日課の偵察を行う長弓兵 [作画:七海]
るしにゃん王国において「長弓兵」といった場合、それは主に「大災厄」後に誕生した弓を使用する兵士たちを意味する。
高位森国人である彼らはその証明としての特徴――長い髪と耳を持ち、やせぎすで絹の服と頭環を纏っている――はあるものの、
一般的なイメージのように森の王宮でひっそりと暮らす、知識の民としての姿にはやや遠い。
何故ならば大半が忍者の里出身である彼らは、世界忍者の一員としての服装――るしにゃんではドイツ風の衣服を身に纏い、
鋭すぎて悪く見える目つきをしているからだ。これに、弓と矢筒を装備しているのが弓兵部隊である。
長弓兵の場合は、更に特徴的となる。
彼らは実に背丈以上にもなる長く大きな弓を携え、また装備の面でも小手と胸当てを身につけている。
が、上記例のように他国の人々からするとそれはごくささやかな変化であり、その違いについて外見から理解する事は困難であったようである。
そもそも、るしにゃん王国の弓兵たちが装備していた弓は、世間一般で言う「長弓」であった。
洋の東西を代表する弓――和弓とクロスボウを研究して作られたこれらは、また彼等が得意とする魔術を適度に組み込む事により、
国民である森国人が使用するに適した利便性と兵器としての有用性を追求した、非常に完成度の高いものであった。
星見の国として知られていたこの国が得たこの新たなる戦力は、一般に知られる機会は少なかったものの、
過去の対オーマ戦に少なからず影響を与えていた(*注1)といわれている。
注1:非公式な記録ながら、橙オーマとの二度目の戦闘が回避されたのはるしにゃんの弓兵部隊の存在が大きい とされる記述がある。
この状況が変化したのは、歴史において「大災厄」とされる事件後である。
各国からの募金、支援など有形無形の協力によって表向きは元の形を取り戻したものの、そのダメージは国内の様々な分野で尾を引いていた。
こと弓兵についてもそれは例外ではない。
最大の問題は、要となる弓そのものの生産過程に現れた。
るしにゃん王国の長弓は合成弓であり、その原材料は木材が大半を占めていたのだが、それらがその生産区画ごと、文字通り消失してしまったのである。
しかも、どういった理由によるものなのか、再生された森林の木材を使用して生産した弓は、以前ほどの飛距離や安定性を維持出来なかった。
特に楡、樫といった魔術的な特性の強いものほどこの影響は大きく現れていたのである。
……これらの現象をどのように解釈するべきかについては、るしにゃんの星見司たちの間でも未だ意見が分かれており、未だ結論には到っていない。
しかしそうした論議はさておいても、弓自体の改良は必要であった。
再び、るしにゃん王国の挑戦が始まったのである。
[文章:ノーマ・リー]
○改良の実際
「……要するに、これからは魔術に頼り過ぎるとダメってこと?」
「まあそういう事です」
〜調査チームの最終報告会における、とある会話記録
改良にあたって招集された開発チームが最初に行ったのは、新たに作られた弓とその素材を分析することだった。
調査分析と各種検査の詳細については専門的な話となるのでここでは割愛する。
が、実に一年以上の時間をかけて慎重に行われた検査の結果は、ごくシンプルであった。
魔術とその構造自体に問題はない(*注2)素材の強度についてもほぼ同様である。
注2:これは、同じく魔術の焦点具として使用されている矢についてこれらの現象が見られない事から推測された事実による。
強いて違いを言えば、素材の魔力への親和性が弱まった――簡単に言えば「魔術のノリが悪くなった」という点に尽きる。
これを踏まえて、改良の方向性は次のように固まった。
「魔術自体の重ね掛けやさらなる強化は控え、技術による強化を目指す」である。
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まず、開発チームが取り組んだのは、弓丈(弓自体の長さ)を更に長くするという事だった。
元々弓はその構造上、長ければ長いほど飛距離が伸びるものである。
過去の弓が長さをほどほどに抑えられていたのは、使用に支障が出ると判断された為だった(*注3)。
注3:弓自体が長い場合、まず取り回しが困難になる。また重くなる、引き絞る時に使用する力が増える等々、
様々な問題が一挙に増大する。この為、通常は長さをある程度に抑える場合が多い。
この制限を一端取り払い、純粋に技術のみで飛距離を追求した結果、新たな弓丈は一般的なるしにゃん国民の背丈を軽く越える長さにまで達した。
とはいえこれは一般人の平均身長からみた話であり、弓兵を取り扱う部隊員たちと比較した場合には身長と同程度となっている。
この点も、他国の人々から弓兵の変化がくみ取れない一因と思われる。
この改良は劇的な効果をもたらした。
まず、弓丈自体の長さが増えたことによって使用する素材が増えたことから、結果として魔術的親和性が従来値以上に高まったのである。
これによって、掛けられた魔術の構造自体は一切変わっていないにもかかわらず、今まで以上に安定した能力が発揮できるようになった(*注4)。
注4:この場合の安定とは、飛距離や弾道についての安定である。この点は魔術的な補助がない場合に著しく安定を欠く為、開発チームのさらなる課題となった。
過去の「大災厄」での経験から、相手の手が絶対に届かない距離からの攻撃手段を必要としていたるしにゃんの軍部にとって、これは喜ぶべき効果であった。
ただし、問題もあった。
弓自体が強くなりすぎた(弓を引く時に必要な力が大きくなりすぎた)事で、使える人間がいなくなってしまったのである。
これを解決する為に、考え出されたのが新たな装備としての小手と胸当てであった。
弓兵軍団の母体となる忍者や開発チームの主流を担う魔法使いたちだけではなく、賢者を多く擁する医師たちの協力を得て開発されたこれらは、
一般的な装備としての効果だけではなく魔術的防護――使用者の腕力を一時的に高めると同時に、
ゆるやかではあるが引き絞る時に酷使される筋肉への保護と成長・回復を促す効果が付与されている。
これは魔術による瞬間的な増強(*注5)によっての反作用を少なくしようとする試みであったが、
注5:基本的には弓を引き絞る時のみに発動するように施術されている。
これは弓や矢に掛けられている各種魔術と必要以上に干渉し合わないようにする為である。
使用者が増えるに従って弓兵たちの筋力そのものを高めていく結果となったのである。
こうして、魔術の力を借りつつもそれに頼り切ることのない、新たなる弓兵が生み出されたのであった。
[文章:ノーマ・リー]
○星見司からの報告書抜粋
〜長弓の性質変化とそれに伴う再編の必要性について〜 32508002
隠れ里より提供された長弓と矢の各パーツを分解して世界解析を始めとした各種定性分析を行いましたところ,
以前のメンテナンス結果と比較して,魔術親和性のパラメータのみが非常に低下しており,
射撃支援を成立させるのに,あるいは魔法の発動に必要十分な量の魔力が長弓内に確保できていないことがわかりました。
るしにゃん王国内にあるほぼ全ての素材についても調査を行いましたが,異なる素材を用いてもこれを解決することは不可能と思われます。
よって,長弓が変質したことによる対策として考えられる方法は以下のとおりです。
・プランA:魔法による補助を諦めて弓兵の体力と技術のみで解決する
・プランB:素材の量を増やすことで一つの武器に付与できる魔力量を上げる
・プランC:物理的な形状を放棄して新しい弓の形を模索する
・プランD:素材の変質原因について更なる調査を行い,根本的な解決を図る
プランAについては我々が元来非力な森国人であることから相性が悪く,
プランC,Dについてはかなりの時間を要するか,何らかの形で特異点を突破する必要があります。
なので,我々側の意見としては,プランBをまず進めることが最良なのではないかと――
〜弓兵支援兵装に関する報告〜 71608002
プランBの実施によって発生した弓兵の体力不足問題の対処として依頼された支援兵装への付与ですが,
以下の施術が行われていることを報告いたします。
・施術1:医師らの技術を基にしたテーピング型の内装による物理的な補強
・施術2:装着部位周辺の筋力へ少しの疲労回復・補強効果を持つ魔法付与
・施術3:わずかに自己暗示を与えるおまじない(隠蔽済)
長弓の魔法と筋力強化の魔法が相克する影響は低いものですが,それを抑える目的と
いきすぎた技術とならぬようなるべく魔法に頼らない兵装を開発いたしました。
施術1と施術3によって,弓兵の身体ポテンシャルを最大限に引き出し,
その上で肉体が酷使され深刻なダメージとならぬよう施術2がサポートする形式です。
なお,施術2,3につきましては注文どおり弓を使用するときのみに発動するように調整してありますので,
弓兵の身体・精神に必要以上の負担を与えることはありません。その点はご安心ください。
では以下にその詳細を――
[文章:クレール]
要点・周辺環境 | ||
高位森国人 | : | 長い耳,長い髪(男女とも),やせぎす,絹の服装,頭環 森の王宮 |
長弓兵 | : | 小手,胸あて,長い弓 森 |
弓兵 | : | 長弓,矢筒 森 |
世界忍者 | : | 世界の国をモチーフにした忍者装束,尻尾,悪そうな目 城の屋根 |
** | 体 格 | 筋 力 | 耐久力 | 外 見 | 敏 捷 | 器 用 | 感 覚 | 知 識 | 幸 運 |
高位森国人 | +1 | 0 | 0 | +2 | +2 | 0 | +1 | +2 | 0 |
長弓兵 | +2 | +3 | +3 | +2 | +4 | +4 | +2 | 0 | -1 |
弓兵 | +2 | +2 | +2 | +2 | +4 | +2 | +2 | -1 | -2 |
世界忍者 | -1 | 0 | 0 | +1 | +2 | -1 | +2 | -1 | 0 |
HQボーナス | +1 | ||||||||
合計 | 4 | 5 | 5 | 7 | 12 | 5 | 7+1 | 0 | -3 |
特殊 総消費燃料:7万t (中距離3万,夜間戦闘2万,白兵戦闘2万) |
*高位森国人は根源力25000以下は着用できない。 |
*高位森国人は一般行為判定を伴うイベントに出るたびに食料1万tを消費する。 |
*長弓兵は遠距離、中距離戦闘行為ができ、この時、選択によって戦闘の攻撃判定は評価+3出来る。補正を選択した時は燃料1万tを必ず消費する。 |
*長弓兵は中距離戦行為を対空攻撃と見なすことが出来る。 |
*長弓兵は射程内に入り次第、AR消費なしに攻撃できる。 |
*長弓兵の着用には15万根源力を必要とする。 |
*弓兵は中距離戦闘行為ができ、この時、選択によって中距離戦闘の攻撃判定は評価+2出来る。補正を選択した時は燃料2万tを必ず消費する。 |
*弓兵は中距離戦行為を対空攻撃と見なすことが出来、対空戦に限って射程内に入り次第、AR消費なしに攻撃できる。 |
*世界忍者は夜間戦闘行為ができ、この時、攻撃、防御、移動判定は評価+2され、燃料は必ず−2万tされる。 |
*世界忍者は白兵戦行為ができ、この時、攻撃、防御、移動判定は評価+2され、燃料は必ず−2万tされる。 |
*世界忍者は侵入行為ができ、侵入行為(判定:幸運)時、判定は評価+3される。 |
*世界忍者は施設破壊ができ、このとき施設の効果は無視される。 |
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高位森国人 | → | 賢者(職業),動物使い(職業),弓兵(職業),藩王(特別職業) |
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弓兵 | → | 太陽王イシル(ACE),野伏(職業),長弓兵(職業),百連弓(絶技),森の神(イベント),森の遺跡(施設) |
世界忍者 | → | 世界貴族(職業),エミリオ・スタンベルク(ACE),世界侍(職業) |