○トラリスのおはなし
〜〜るしにゃんのとある地方に伝わるおとぎばなし。作者不詳。
そのむかし、トラリスといういきものはどこにもいませんでした。
ネコリスといういきものも、いませんでした。
もりの中にはさまざまなどうぶつが、おもいおもいにくらしていたのです。
ある日そこに、ひとりのたびびとがやってきました。
おおきなめをした、つかれたかおのおとこのこ。ぼろぼろのふくに、はだしのあし。
やせているせいで目ばかりがぎょろぎょろとうごきます。
もりのどうぶつたちは、そのすがたにおびえてにげてしまいました。
けれど、二ひきだけ、おとこのこにちかよっていったものがいました。
あしがはやくてこうきしんのつよいネコと、つよいきばとつめをもつおなかをすかせたトラです。
ネコはおとこのこにといかけます。
どうしてこんなところにきたの。ひとはここではくらせないよ。
どうして? とといかけるネコに、おとこのこはうれしそうにわらいました。
くらすためにきたんじゃないよ。ともだちをさがしにきたんだ。
ぼくといっしょにもりをでて、たびをしてくれるともだちだよ。
ほかのみんなはにげてしまったけれど、きみたちはいっしょにいかないかい?
ネコとトラはかおをみあわせます。
めのまえには、みたことのないおとこのこ。やせっぽちの、でもえがおだけはきれいなこ。
にこにことわらうかおは、ぽっかりうかぶつきのよう。
いっしょにいけば、たのしいことがあるの?
ネコのことばに、おとこのこはくびをふりました。
たのしいことだけじゃないけれど、きっとたのしくなるよ。
それをきいて、ネコはおとこのこのかたにとびのりました。
それじゃあいこうよ。もっともっといろいろなものをみてみたい。
ネコがきらきらした目でみるので、トラはあくびをしていいました。
いっしょにいけば、はらはふくれるのかい。
おとこのこはちょっとくびをかしげてこたえます。
もりにいるときよりも、ずっとおいしいものがたべられるとおもうよ。きみのきばとつめがあれば。
それならと、トラはおとこのこをせにのせました。
こうして、にひきとひとりのたびがはじまりました。