イグドラシル > 魔法弓手 > 資格試験                                                         ……旧ページ

資格試験

Dresschange to magic bow master

資格試験の告知

 魔法弓は本来の魔法よりも自然界に偏在する魔力を収束させて武器を生成するものである。
そのため,心得をしらぬものが欲のままに扱えば理論上は無制限に収束と生成を開始して暴走,大破壊をもたらす可能性がある。 もちろんその前に収束する魔力に魔法弓具が耐えられず爆発してしまうが,その爆発は使い手を死に至らせるには十分である。 そのため,魔法弓具を取り扱うには担うだけの技術と精神があるかどうかの資格が求められるのである。
参考:魔法弓手資格試験告知広告

/*/

「ではこれより最終試験を開始する!」
号令が飛ぶのは深夜のるしにゃん王国。この日は満月の夜であった。
満ち欠ける空の大穴として夜を照らす月は
魔女や人狼と深く関わりがあるように,魔法と神秘の象徴として古来より語り継がれている。
その月が満ちるとき,すなわち世界に魔力が満ちるときである。

「はじめ!」
受験者達―その多くは隠れ里の忍びであり,中には魔法使いもいる―が
思い思いの方法をもって精神集中をはじめる。
詠唱のように高らかに歌うことはないが、その一人ひとりが自然に偏在する魔力と対話し、助力を願っていく。
世界解析できる者の目なら,彼らのもとに自身の魔力を呼び水として周囲の魔力を集めているのがわかるだろう。
その集まる中心は魔法弓具である。

「構えよ!」
試験官がころあいを見て声を出す。一人ひとりが自身の最速で攻撃準備することも必要だが、
それと同じくらい、指揮を受けて統制された動きをとれることも弓兵には求められることである。
そのため、号令を受けてから受験者達は集めた魔力を基に魔弓陣と呼ぶ魔法陣を編み上げていく。
試作型ネコノツメの支援を受けて徐々に形成される魔弓陣は、
魔法弓を形成するための一層と更なる収束と照準・威力を制御するための二層の順に形成される。
その手には何も握られていないはずなのに、確かにそこには弓があるように見えた。
やがて彼らは矢を番えるように構えると、両手を打ち起こし、弓を引き絞る。
引き分けられた両の手の間には、確かに引き伸ばされた光があり、
二層目の円陣のゆるやかな回転と共に、その光は物質とならぬまま、実在感を強めていく。
やがて、彼らは狙いを上空の一点に向けて固定した。
空に大きく輝く光の穴、満月である。

「はなてぇ!」
最後の号令と共に受験者は一斉に緊張を解き放つ。
まるで実在の弓を引いていたかのように右手が握りを放し、
光が魔法陣の最後の導きを受け、狙うただ一点へと向けて空を疾る(はしる)。
その光景はまるで、何かが、この世を覆う闇へ反撃の狼煙をあげるようにも、見えた。

/*/

こうして彼らは試験を無事通過し,魔法弓手として輝く弓を扱うことを許された。
戦場では臨機応変な対応が求められるため,今のように悠長に時間をとることは許されない。
再装填とベクトル調整を司る第二層の魔弓陣とその回転率の制御が,彼らが常の修練として求められる課題であると共に、
魔法弓具の完成へと向けた研究への助力が彼らが新たに負う責務である。
また、魔法使い出身のような弓術の腕がいまひとつ及ばないものには2級の資格を授与される。
知識こそ1級の魔法弓手と大差はないが、自らの身技を以って魔法弓を学び鍛えるには技量が足りていない。
彼らは今後忍びの里にて弓兵の修練に励み、長弓兵を名乗れるほどにその技術を磨く必要があるだろう。

written by クレール / illustrated by はっぷん(試験風景)・クレール(告知の張り紙 石壁はフリー素材使用)