るしにゃん悪臭事件とその後日談

 ことのはじまり

「ご主人ご主人。」
「なぁに?」
「言い忘れてたんだけど、ボク、魔力をぷーにすることができるの。」
「……へ?」
「うん。」
     ――あまりに間抜けな返事のせいでるしねこと会話が成立してしまったるしにゃんの民

ある集落にて

それは、るしにゃん王国の猫士がるしねこという1種族として歴史を歩み始めたすぐのことである。
始まりは、井戸端会議で話に上がる程度の噂話であった。

新婚さん:「うちのねこ、最近おなかの調子が悪いらしくて……。」
若づくり:「あら、下しちゃってるの? それなら猫にもこの薬草が効くらしいわよ。」
新婚さん:「ううん、そうじゃなくてね。その……くさいのよ。」
猫耳好き:「あー……。身体のケアができてないのは、おなかだけに限らないんじゃない?」
新婚さん:「ええと、その、くさいのは・・・おならなのよ。もうしょっちゅうでね。」
猫耳好き:「え、ねこって、おならするの?」
若づくり:「するわよー。その、ちょっとお下品なんだけど、音とか匂いとか、子供や赤ん坊がするみたいな感じでね?」
猫耳好き:「へぇー……。」
新婚さん:「おトイレのほうは別にふつうなんだけど、なんかちょっと心配なのよね……。」
若づくり:「……あぁ!もしかしてうちのこもそうなのかしら!」
新婚さん:「あら、お宅のねこちゃんも?」
若づくり:「わからないんだけどね。部屋で一人過ごしていると、どこからともなく、自分のものではないおならのにおいがしてくるのよー。しかもほぼ毎日。」
猫耳好き:「それはむしろ怖い話ねぇ……」
若づくり:「でしょう!? 正体不明すぎて怖かったんだけど、猫が隠れてておならをしてたっていうんなら、納得かなぁって。」
猫耳好き:「なるほど……。」
若づくり:「さっそく今日帰ったら確かめてみるわ。」
新婚さん:「見知らぬおじさんじゃないといいわね。」
若づくり:「やだー、ふふふふ。」

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最初は、そんな笑い話のような雑談で済んだ話である。
だが、2週間もたたないうちに、笑い話は王国全土で抱える社会問題となったのだった――